マリンパークでは様々な生き物を飼育展示し、それぞれに専門のスタッフがいます
このコーナーでは毎月、各担当の飼育係が生き物や、飼育エピソードなどを紹介しています

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2008年4月1日更新



2008年3月20日。マリンパークの展示にマンボウが加わりました。
そう。あの「マンボウ」です。

実物を見たことがない方はいると思いますが、どんな形をした魚なのかを知らない方は、
老若男女問わず皆無ではないでしょうか?

今月はマンボウの展示を実現させるまでの道のりを、飼育係の視点でお話しましょう。

マンボウは世界中の温帯から熱帯の海に棲んでいます。
夏が近づくと、南からの暖かい海流に乗って登別の沖合いにもやってきます。

成長すると体の大きさは3mを超え、体重は2トン以上。
さらに、メスが一度に産む卵の数は、
脊椎動物の中で最も多い3億個とも言われています。
しかしそのほとんどが他の生き物の餌になってしまい、
無事に成長できるのはごくわずかです。

自然界ではクラゲやイカなどを食べているマンボウですが、
水族館では主にエビのすり身を与えています。
また、ユーモラスな体つきの為か泳ぎが得意ではありません。
そのため、水槽の壁やガラスに衝突してケガをしないよう、
マンボウ水槽の内部には特別に透明のシートを張り巡らせ、
クッション代わりにします。
マンボウ  Sun fish

解説にも書きましたが、マンボウは登別の海にもやってきます。
飼育係になり立ての頃、地元の定置網に入ったマンボウをみて「北海道でマンボウ?!」と驚きがありました。
人気のある魚なので展示も行いましたが、「泳ぎが下手」、
「神経質」など展示をするにはマイナス面の多い魚でもありました。
結果的に「マリンパークにある水槽では上手く飼育はできない」という結論に達し、
「いつかマンボウ専用の水槽を作るぞ」という希望を胸に抱き今に至ります。

そんな中、2007年の8月に突然会社から「マンボウ展示について下調べをしてくれ」と指示がありました。
しかもオープンは春休み。。。「半年しかないですけど。。ちょっと時間的に厳しいのですが。。」
なんて言葉は届きません。。。話はどんどん進み、正式にマンボウ館建設が決まってしまいました。
この半年の間に展示槽の建設業者選定、水槽設計、見積もり、建設、水作り、生物搬入などなどやることはたくさんあります。
オープン予定日から逆算するともう時間がありません。
早速マンボウを飼育している他の水族館の施設を見学させて頂き、
各水族館の担当者から飼育に関するアドバイスを沢山いただきました。     

個人的な印象。。。
「こりゃ大変だ・・」

建設業者が決まり、水槽の仕様を念密に打ち合わせ、設計図が出来上がったところでいよいよ工事の始まりです。
工事前のマンボウ館 すべてが取り除かれた水槽

今回マンボウ水槽を設置する場所は、バレンツ館(アシカショープール)の地下。
もともとラッコや保護をした海獣類を展示していたところです。
水深は1.5mしかありませんので、マンボウ飼育には適しません。
そこで、もともとあった水槽を取り壊しマンボウ専用に作り変えます。
一度すべてを取り除き、ほぼ一から作り変えです。
ゆえに変更点は多岐にわたります。
なんといっても水槽全体の大きさや水深。これが決まらなければ何も始まりません
さらにアクリルガラスの形状や照明の種類、そのランプの色や数、配置。水槽の底や壁の色。
衝突防止シートの素材。水槽配管の位置や取り回し。館内の床や壁の色などなど、、、、、
まだいないマンボウを想像しながらマンボウにもお客様にも、
そして飼育係にとっても使いやすく快適な環境を整えなければらリません。

しかし、工事が始まってしまうと意外なほど順調に進みます。
仕事の合間にちょくちょく現場に顔を出していたのですが、なかでも印象的だったのは、
空を飛ぶアクリルガラス」。
3分割されて運ばれてきたガラスを、1枚ずつ大型クレーンを使って運びます。
事前に建物の壁の一部を取り壊し、地下への搬入口を作りましたが、
狭い搬入口を職人の巧みの技と経験で上手く建物に入れてきます。流石です!!

建設の工事、内装の工事、電気工事がほぼ終了し、完成が見えてきました。
更に水張りテストをして水漏れ等が無いのを確認して2月15日にようやく完成!!
ここからマンボウの搬入、オープンの3月20日に向けて最終的な水槽の調整に入ります。
空を飛ぶアクリルガラス 壁を壊し何とか搬入 3分割されたガラスを1枚に接着
丹念にアクリルが磨かれます ほぼ完成です 水張りテスト
水漏れも無く無事終了!!
順調に進む水槽の工事ですが、それに反して大きな問題が発生していました。
実は肝心のマンボウがオープンぎりぎりまで手配ができませんでした。
というのも、夏になれば登別の沖で採れるのですが、オープンのこの時期は本州のどこかから運ばなければなりません。
業者を通じて手配を進めていましたが、かなり難航・・・

「これじゃーオープンできない!?」


対外的にマンボウ館オープンの告知。更にテレビのCMまで作っているのです。。
相当なプレッシャーが私を含め担当者にのしかかります。

こんな時に心強いのは他の水族館。困った時はお互い様!!
茨城県にあるアクアワールド大洗水族館より展示中の貴重なマンボウを1個体譲っていただけることになりました。

「ありがたい!!」


業者のルートでもあきらめずにマンボウの手配を続けていたところ、
「三重県でマンボウが採れた」と連絡がありました。
これにより突然マンボウ輸送の日程が決まりました。。
採れたマンボウと、大洗水族館のマンボウを一緒に北海道へ輸送することになっていましたので、
「もしかしたら突然出張かも」なんて家族に話し、一応出張の準備をして出社してはいましたが。。。。

うれしいやら、せわしないやら。。

関係各所にあわただしく連絡を済ませた後に、輸送の準備の為一足先に大洗水族館へ向かいます。
大洗に向かったのには他にも理由があります。
マリンパークでは本格的にマンボウの飼育を行ったことが無いので、
餌のことなどこと細かにマンボウ飼育の研修をさせていただく為です。

朝の調餌から、1日2回のマンボウの給餌、そして夕方の閉館まで作業着と長靴姿で研修をさせていただき、
次の日の昼過ぎに、三重県で採れたマンボウを乗せたトラックが大洗水族館にやってきました。
どんなマンボウが運ばれてきたのか?キズはないか?そもそも元気なのか?
心配は尽きませんが、状態も良く、落ち着いている姿を見て安心しました。

早速トラックの水槽の水を交換し、大洗水族館の貴重な展示個体を積み込んで北海道に向けて出発。
近くにある大洗港から北海道苫小牧港まで約18時間の長い長い船旅です。
出航前にトラブルがあり、どうなることかと冷や冷やしましたが、フェリー会社のご協力でなんとか解消し、乗船できました。

あとは波に揺られて北海道へ!!

マリンパークに着いたのは夜遅く。
あらかじめ水槽への搬入の段取りをしっかりとしていた為、スムーズに作業が終了しました。
水槽の中を落ち着いて泳ぐマンボウを見てまずは安心。。

オープン間近になると水槽にもすっかり慣れ、餌の時間になると水面まで寄ってくるようになりました。
大洗水族館でマンボウ飼育研修
調理実習のようです
マンボウの餌
個体ごとにしっかりと量が決まってます

マンボウの給餌
大洗水族館に輸送用トラック到着 三重県からのマンボウと初対面 フェリーで北海道まで移動
甲板員の方も興味津々
マリンパークに到着
慎重に水槽へ移します
水槽へ入れる前に体重測定
餌の量や薬の量を決める目安にします
無事に水槽に入ったマンボウ
落ち着いた姿に一安心。。

こうして2008年3月20日にマンボウ館がオープン。

オープン初日に、「はやくマンボウ見に行こうよ!!」という
お子さんの声を聞いたとき、嬉しくてすべての苦労が報われました!!

水槽の中をゆったりと泳ぐマンボウを見ていると飼育係でも癒されます。
ぜひマンボウに会いにきてくださいね。




最後に。。
貴重なマンボウを譲ってくださった
アクアワールド大洗水族館ならびにスタッフの皆様。
マンボウ輸送の際に多大なご協力を頂いた
商船三井フェリー株式会社の皆様。
「本当にありがとうございました!!」
この場を借りてお礼申し上げます
飼育課 学芸員吉中敦史