マリンパークでは様々な生き物を飼育展示し、それぞれに専門のスタッフがいます
このコーナーでは毎月、各担当の飼育係が生き物や、飼育エピソードなどを紹介しています
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2005年10月1日更新

皆さん、「ようせい」と言う言葉から何を連想されますか?
一般的には、映画ピーターパンに出てくる妖精「ティンカーベル」や北海道神話に出てくる「コロポックル」などを連想するかもしれません。
今回紹介する「ようせい」は、水棲生物の卵やポリプの状態から体の形を変えて成体になる段階の「幼生」です。
多くの場合、幼生は成体とかけ離れた外形をしていて似ても似つかず、どうしてこれがと思わせられることがあります。
マリンパークニクス生まれの「謎の幼生」を紹介します。

流氷下で見られるクリオネ(写真.1)の「幼生」が、2年前に当館で誕生しました。
クリオネとは裸殻(らかく)翼足目(よくそくもく)に分けられ、和名をハダカカメガイと呼び名前の通り殻を持ちません。
しかし、孵化した「幼生」は釣鐘型の殻を持っています。この幼生をベリジャー幼生(写真.2)と言います。
殻は淡い赤色、内臓器官がすけて見えます。殻の下側には面盤からの繊毛があり、たえず運動をする器官になっています。
ベリジャー幼生の大きさは0.2o目測ではほとんどわかりません。これは顕微鏡写真です。デジタルカメラで撮影しました。
スライドガラス上をあちこちと動き回るため何十枚も撮った内の一枚です。
この状態を10日間程すごした後、釣鐘型の殻を脱ぎ捨て多倫形幼生(たりんけいようせい)を経て成体のクリオネに成長していきます。
今回は残念な事に多倫形幼生になる手前で全滅してしまいました。
2005年8月にも無性卵でしたが、産卵がありました。繁殖成功するようにこれからも展示育成に励んでいきます。

(写真.1)クリオネ (写真.2)ベリジャー幼生

正体不明の幼生
キチジと深海性のヒトデ水槽を掃除していた時、水槽全体に霧がかかったように白くなり全く見えなくなりました。
よく見るとピンク色をした小さな丸い粒も多量に浮遊してきて卵だとわかりました。
産卵のきっかけは掃除の影響かと思われます。
すぐに回収し様子を見たところ日を追うにしたがい卵の形が変態していきヒトデの幼体になっていくのが顕微鏡で確認できました。
しかし、その水槽には6種類21個体のヒトデがいます。その種類が解るまでに卵を回収してから何ヶ月もかかりました。
卵の形態変化を写真で見比べてください。

2004年8月13日
回収した受精卵です。薄い受精膜の中では、すでにくびれが入り分割がはじまっています。
8月20日
産卵から1週間経ち楕円形です。
9月1日
洋ナシ形で体の前方には3本の腕を持つ、ブラキオラリア幼生に変態しました。
11月1日
底質に付着した変態中の幼生
2005年2月2日
変態後の稚ヒトデ中心が口側
2005年9月3日
腕の数は11本あります。これだけの腕の数を持っているヒトデは一種類しかいないので、
正体はフサトゲニチリンヒトデと解りました。現在も順調に育っています。
展示中のフサトゲニチリンヒトデ。産卵したと思われる水槽内の成体です。

自然界と同じく水槽内でも生き物達の繁殖活動が繰り広げられています。
多くは顕微鏡でなければ見る事ができない小さな生物ですが、時として、水槽内が白く濁る事や卵塊を発見する事があります。
日々の観察の介あって、フサトゲニチリンヒトデの有精卵を回収でき育てた事で幼生を見る事ができました。
皆さんもこのような視点で水槽を見ると新たな命の誕生に遭遇できるかもしれません。
飼育課志村和生